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書評 大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争

経済と軍事力による主に近大ヨーロッパの勢力の移ろいを分析した歴史的な本。

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3行サマリ

  • 国家の勢い = f(労働人口の厚さ, 教育水準, 資本力・稼ぐ力) で概ね関数化可能。国家の勢いと軍事力には若干のズレがあるが、Δ国家の勢いが低下している状態で軍事力を維持・強化しようとしても衰退する。企業に援用すれば本業の稼ぐ力(営業CF)や機動的資本調達能力と従業員の技術力や特殊なスキルの関数になってくる。ただベースのなるのは稼ぐ力であることが肝要だ。また地政学的リスクに巻き込まれずに国力を維持することが振り返って重要であり、企業においてはレッドオーシャンでの苛烈な競争に勤しんでいると課外のジャンルから出し抜かれてしまう。
  • 20世紀初めの日本の工業力はイギリス100とすると1桁代。イギリスがメインストリームでアメリカはWW1後にかけてキャッチアップ中といった感じだ。ところでJRの前身の国鉄のさらに前身の日本鉄道は名目上民営であったが、日本鉄道の導入車両をみるとほとんどイギリス製となっており当時のイギリスの工業力を如実に反映している。同時に当時数十年前までは帯刀して侍していた先達らが世界の趨勢に急速に各国の技術を導入しキャッチアップしてインフラを整備していたことには恐れ入る。
  • アメリカの近代史ではマニフェストディスティニーが重要な観点となるが、これがWW1で太平洋・大西洋を横断する観点とイギリスが広大な植民地を抱えながらその維持のために軍事力を消費し、その植民地がさほど儲からないと運営自体に手間かけたく無い気持ちもあることを考慮すると第三世界..? からみたアメリカ・イギリスの挙動に対する心象も理解しやすくなる。