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書評 イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史 上: 血塗られた諜報三機関

ここ最近の中ではダントツに面白いノンフィクション。映画ミュンヘンが観れるのならオススメであるが、苦手なら嫌悪感を抱くかもしれない。

 

3行サマリ

  • 事実は小説よりも奇なりがまさに当てはまる、テロに「効率的な」テロで対抗する血生臭い歴史。そのえげつなさに不快感を生じるが、グイグイ引き寄せられてしまうのも事実。平和というものが造られた均衡状態であることを直視させられる。
  • モサドとはいえエジプトに大量のミサイルが元ナチの科学者によって大量に生産されつつあるのを事前に検知できなかったり、PLO に注目するだけで民衆蜂起(インティファーダ)を見過ごし、イスラムからみたらジェノサイドのような殺戮行為をしてしまったりと盲目的に正しいと信じることなく健全な疑念を持つことが重要であると再認識させられる。
  • 建国直後はやらねばやられる状況であった背景もありつつ世界に離散し(ディアスポラ)力に服従させられてきた同胞への冷たい眼差しを持つグループの存在や、やがては切れるものの右翼政党と情報機関の蜜月期間があるのは、イスラムからみると暴力による帝国主義に見えるのも一理あると思えてしまう。しかしすでに「仕上がった」先進国がその血塗られた自国の過去の歴史をスルーしてイスラエルの暴力的措置への非難をするのは、積年の犠牲の上に成り立つイスラエルからすると理想・教条主義的に見えてしまうだろうな...というのもわかる、そんな境地に立てる偉大な本。

 

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