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株主優待による資本コスト :: スカイラークの事例

個人投資家株主優待で人気のスカイラーク (3197) が 9 月に優待の改悪を発表し、株価を下げた。

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https://moneyworld.jp/news/05_00034367_news によると

 

すかいHDの優待は年2回、6月末と12月末を基準日に、食事の代金が500円単位で割引になる株主優待カードがもらえ、個人投資家に人気の株主優待の1つとなっていた。一方で、2017年に米投資会社ベインキャピタル保有株を売却して株主数が増えたこともあり、優待コストの負担は近年大きくなっていた。新型コロナウイルスの感染拡大で収益環境が悪化する中、人気の優待も見直しを迫られた格好だ。

今回の変更で300株以上を保有する株主の場合、従来から半額以下となり、影響が大きい。100株以上299株保有の場合は6000円分から4000円に、300株~499株は2万円から1万円に、500株~999株は3万3000円から1万6000円に、1000株以上の場合は6万9000円から3万4000円に変更となる。

 

とあるが、「株主優待減額に伴う売上減および株主優待費用の減少影響としては、2021年12月期以降の営業利益を15億円押上げる」とあり、2-3 倍の優待を発行しているわけだから、毎年「この金額の多分2-3倍くらい x 消化率」を資本市場からの調達に費やしていそうだ。ざっくり売上 3,000 億、営業利益 300 億弱の会社が消化率が不明のため適当な推測だが少なくとも約 20-30 億円費やして下方硬直性のある資本調達をしていると想像できる。この変更による株価の下落は 10% 強で約 300 億近くの時価総額相当である。

このインパクトをみると、たかが優待とはいえない。その資本コストの高さが如実になったのと同時に、改めて安定株主優待の確保が資本政策と優待政策の柔軟性に重要かがわかる。右往左往する優待政策は証券会社を儲けさせるかもしれないが、ロイヤリティーの高い顧客の離反につながるだろうし、個人投資家の記憶に残ることで市場からの調達の柔軟性を劣化させるのだ。