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知のレバレッジを最大化せよ (旧はてなダイアリーから移転しました。)

書評 エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング

定番の本を読んでみて実際のところを例によって三行サマリ

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  • 抽象度が高い概念の説明書。このため対象オーディエンスは経営/ビジネス職がむしろターゲット。エンジニアや PdM ならば YAGNI / コンウェイの法則 / スクラム開発の少なくとも概要は知っていると思うのでコンテンツが重複気味。
  • 原則 YAGNI 法則を尊重しつつ、適正なタイミングではマイクロサービスアーキテクチャを推すなど、捉え方によってはいくつか矛盾をはらむところがある。では「適切な」ときは具体的にはいつなのかというケーススタディが極端に不足しており、そこは現場に近いレイヤーの読者なら実践的に感じられずフラストレーションがたまるところである。あくまで個別の原理の概要が網羅的に紹介されているので適切なインデックスと、自身の経験知・暗黙知の整理用としての期待値で読まれたい。
  • 取引コストを抑えるために内製化したが、管理会社の結果、冗長性・複雑さが増し、コンウェイの法則によりソフトウェアが buggy になってしまうという組織設計とソフトウェア設計のリンケージが本書でもっとも重要な示唆であり、プロダクトの0-1/成長/回収フェーズごとに仮設・実験思考や探索に向いた機能横断チームと漸次的改善・深化にむけた改善チームの使い分けと組織設計が連動して行われるべきであるということは常に心かげておきたい。なお、前述のマイクロサービス化や内部 API 化の勘所は成長-回収の境界フェーズである。