工事進行基準によって、IT業界はどう変化していくか
前提として
いままでの請負契約については、工事完成基準と、工事進行基準にの選択式が認められてきました。これらの事項については、おおよそ基本契約書でカバーされています。
- 工事完成基準
- 工事が完成した時点で、検収と同時に売り上げを計上する。いわゆる請負開発部分はこれが多い。(用件定義などは、準委任契約などで別形式の契約にするパターンもある。)
今回なにがおきるのか
しかしながら2009年度3月決算から、国際会計基準への収斂を目指す会計基準の改定により、原則として、ITベンダにおいても、工事進行基準が適応されるようになっているようです。
そもそもの狙い、メリット
いままで、市場に上場するIT企業は、クオーターごとの会計報告を求められるので、ITベンダの営業側としては、3ヶ月タームでシステムを納入したい、とか分割計上したい、とか、みなし納品したいとかいろいろなインセンティブが働いてしまい、付け替え的な部分があったりとか、付け替えたとしても次のQがC/F的にはつらかったりとかありましたが、この基準が適応されることですくなくともメリットとしては、順当なキャッシュフロー経営ができる、というメリットがあげられると思います。(中小ソフトウェアベンダではファイナンスしづらいので、ワーキングキャピタルの確保が結構大変です)また、棚卸資産計上における不正もしづらくなる、といメリットがあります。
デメリット
- 業界慣習として、発注者側に、要件を決めるというカルチャーがない
- ベンダとしても完成基準でどんぶりでバッファにしていたが、このままいくと要件定義費用ということで、すくなくとも1〜数人月程度の工数を毎回エンドユーザーに請求せざるを得なくなる。これはとくに中小のエンドユーザーとしてはものすごい違和感を感じるところもあるのでは?。
- 客観的な開発の進捗状況の把握が難しいため、いま56%だから、お金を56%ください、といった折衝が営業としてハンドリングが難しい。また、これらを常々算出し続けるところでプロジェクトアカウント管理費用がのってくるので全体的にシステム開発費用は上昇すると推測される
今後の予測されうる事態
- 比較的大きい(すくなくとも公開企業)に仕事を依頼する場合は、要件定義費用として数十万〜数百万、システムの規模に応じて実際にシステムが完成することがなかったとしても請求される。場合によっては見積もり段階で費用が請求されるため、エンドユーザーの担当者レベルで混乱が発生する。(ベンダはかかった分、お金払え、といい、マネジメント側は支払いはなるべく遅らせたいから)
- 実装期間に要件が追加で発生した場合、アカウント管理が必要なため、かかる工数がいままでよりも増加する
- 公開企業でない、非公開の小規模ベンダでは、いままでどおりの会計基準でゴリ押ししてくる可能性があるので、これらの会社に発注することは表面上、安くみえる。しかしながら小規模ベンダでの倒産・ばっくれ、人いなくなったリスクや、価格が小さい、かつ、人がとりづらいため陥りやすい小規模ベンダの自爆リスク(別途記事書きたいと思います)によって、システムがメンテできなくなったり品質の低いシステムによって、エンドユーザーが信用被害をこうむる可能性が存在する(小規模だが、品質が高いところもありますのであしからず)
上記のようなミクロ的な観点ではちょっとどころではなくやりづらくなっていくのですが、とはいえ業界自体がある程度、落ち着いてきているような気もするので、このタイミングでの導入については、若干の摩擦を生みつつも、最終的にキャッシュフローは改善することを考えると、マクロ経済上はメリットがある、と考えていてます。
参考blog:
http://blog.livedoor.jp/ligaya_cfo/archives/51010506.html