書評 私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化 (ちくまプリマー新書 403)
単に暗記してもあんまり使える知識にならないぞ?というときに振り返ると良い本。
3行サマリー
- 認知科学の観点から人間が知識を自分のもとして使えるようにするための手続きを解説。単に丸暗記した英単語ではなかなか英語による会話ができないのが説明できる。
- 使える知識になるには、前後文脈や周辺の文脈、さらには知覚触覚聴覚などの運動器によるフィードバックと複合的に合わさって創発により使えるようになっていく。人の顔を見て話すことを思い出すなども創発に含まれる。運動器の制御も脳によってされ、かつ、脳の活動が知識の蓄積と他の場所も複合的に反応しながら行われているからである。具体的にいうと、起きてから寝るまで英語を話さないと生きていけない・仕事できない・お近づきになりたい人がいるみたいな環境にぶちこまれると試行錯誤(プラトーやブレイクスルーしながら)で学習し「気づいたら英語使えている」状態みたいなもんである。
- 創発のメガネを意図的につけたり外したりしながらも物事をみていくことにより、アウフヘーベンを起こしやすくするテクニックが紹介されており、自分としては本書を通じて1番大事なところだと思っている。
書評 コスパで考える学歴攻略法 (新潮新書)
藤沢さんの本。意外とピュアな側面が見えて意外なのと、本質的な比率による定量で見た時の受験産業どうなん?という良著。
- 東大入学の約半数が十校いかないほどの難関私立中高一貫校で作られる。しかし残りの半分は公立高校などから入ってくる。ちなみ公立高校から入る人は文武両立が賛否あるが内申などで担保されより総合力が高いような設計となっている点にも留意されたい。日本全体で見ると中学受験組は数%の比率。中学受験塾の難関高入塾者数の絶対値の数値を盲目的に信じるのではなく、分母がどれくらいいて合格する「比率」でいうとどうなのか。どれくらい「薄まって」しまうのか?という観点で冷静に費用対効果を見る必要がある。中高一貫校にいくと大学受験時に浪人する確率が減ったり偏差値が1から3程度底上げされる十分条件が1000万円程度の費用と(中学受験のやり方を引きずり、高等数学に馴染めずなどで「深海魚」化リスクも付随するが)引き換えに得られる。
- 就職コスパでいうと公立高校から偏差値問わず国公立大学理系からの理系就職が就業に対する教育費用対効果としては優れる。中学受験で優秀層が地域によってはいなくなるので高校受験は地域によっては中学受験よりも難易度が下がる。また官僚・弁護士の経済条件の悪化により規制の大きい医師の関門が高難易度化している。が、筆者の見立てでは理系が要求されるまだ国立トップ大学にいけるなら医師は合理的選択だと主張。
- 日本の中高の公立教育は費用対効果が著しく高いため、親は購買力の高いドル建てで稼ぎ日本の教育機関に投資するのが貿易交換的には良い。それだけ日本の購買力が相対的に低下し続けている裏ではあるのだが、、、。
書評 よくわかるアメリカの歴史 (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)
大国の興亡との前後文脈補完のため、アメリカ建国からの歴史を独学大全の実践として教科書で学ぶ。教科書なので書評というのはいかがなものかとは思うが改めて気づきの3行サマリ。
- 連邦党(のちのホイッグ、リパブリカンのほうの共和党)、民主共和党(のちのデモグラットのほうの民主党) がイギリスとのスタンス、南北戦争、奴隷制、有色人種とのスタンスをどうとっていたのかの歴史的推移が追える。
- 13週の独立の経緯や連邦としての中央集権度を高める必然性の議論、中央集権度を高めてからの繁栄、さらにはマニフェストディスティニーの解釈などは現代の議論の論点の前提となる常に揺れ動いてきた歴史でありアメリカの議論の多面性がなぜ生まれるかの背景理解に役立つ。
- 若干後半のベトナム戦争以降の解説が粒度が細かくかつページ数を消費してしまう(その割には一個一個の事象は少ないページでは解説しきれない)。近代史の部分を肉厚にしてほしかったところはある。続きはWikipediaで!
iPhone お引越しガイド
諸事情で iPhone の引っ越し作業を週二回したが、そのコツをまとめておく。「iPhoneから移行」すれば、PC 不要・iClound も不要だ。
事前準備編
- まともな WiFI 環境
- SIM 取り出し用のピン
- モバイルバッテリーなどの電源2つ
手順編
- 新端末と旧端末の iOS バージョンを最新にして揃えておく。さもなくば移行プロセスが長時間化する。
- 旧端末の不要データを消しておくと移行プロセスが多少早くなる。とくにダウンロード可能な音楽関連のデータや写真・動画
- 新端末をリセットする
- 新端末・旧端末ともまともな WiFI につなぐ
- 電源を2つとも供給しておく
- 端末を近づけると移行プロセスがはじまるので 「iPhoneから移行」する
- 顔認証などの生体認証はやっておく。このあと何回も聞かれるので。
- 移行プロセスが完了したら旧端末を消去することをすすめられるが、ここではまだ消去しないこと <<ココ大事>>
- 一通りアプリダウンロードが終わるのを待つ (ここで Wifi 必要)
- 待ってる間に APN 構成プロファイルを新端末にいれ(格安SIMの場合)、SIMカードを差し替えておく。ダウンロード完了後に4G/電話/SMSの疎通確認
- ApplePay クレジットカードを移植する。おそらく新端末でそのまま使えるはずだが・・
- ApplePay Suica とモバイル Suica アプリを移植する。旧端末でカードを消せば、新端末に追加できるようになる。旧端末が消去されてると詰むか時間かかる。
- MFA アプリ (Multi-Factor Authentication (多要素認証)、Google Authenicatorなどのワンタイムパスワードジェネレーター) を旧端末からエクスポート機能を立ち上げて移植する。ネットバンキングでもパスワードジェネレータアプリを使っていれば必要になるかもしれない。旧端末が消去されてると詰むか時間かかる。
- 一部アプリ起動時 (Amazon/Google/Facebok etc )に別端末や SMS でログイン試行を試す場合があり、旧端末で MFA する必要があることがある。旧端末が消去されてると時間かかる。
- ネットバンクなどでスマートフォンの生体認証を使っている場合は、旧機種もあわせて移行手続きをしないと、詰むかしばらくネットバンクなどが使えなくなる。
- AppleWatch 接続先が切り換わったか確認
- 新端末のアプリでひととおり支障がないことを確認する。
- 旧端末廃棄の場合は、旧端末で Apple ID ログアウト、削除。また、iCloud バックアップの旧端末分を削除して容量を節約
書評 エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング
定番の本を読んでみて実際のところを例によって三行サマリ
- 抽象度が高い概念の説明書。このため対象オーディエンスは経営/ビジネス職がむしろターゲット。エンジニアや PdM ならば YAGNI / コンウェイの法則 / スクラム開発の少なくとも概要は知っていると思うのでコンテンツが重複気味。
- 原則 YAGNI 法則を尊重しつつ、適正なタイミングではマイクロサービスアーキテクチャを推すなど、捉え方によってはいくつか矛盾をはらむところがある。では「適切な」ときは具体的にはいつなのかというケーススタディが極端に不足しており、そこは現場に近いレイヤーの読者なら実践的に感じられずフラストレーションがたまるところである。あくまで個別の原理の概要が網羅的に紹介されているので適切なインデックスと、自身の経験知・暗黙知の整理用としての期待値で読まれたい。
- 取引コストを抑えるために内製化したが、管理会社の結果、冗長性・複雑さが増し、コンウェイの法則によりソフトウェアが buggy になってしまうという組織設計とソフトウェア設計のリンケージが本書でもっとも重要な示唆であり、プロダクトの0-1/成長/回収フェーズごとに仮設・実験思考や探索に向いた機能横断チームと漸次的改善・深化にむけた改善チームの使い分けと組織設計が連動して行われるべきであるということは常に心かげておきたい。なお、前述のマイクロサービス化や内部 API 化の勘所は成長-回収の境界フェーズである。
iPhone SE 3 の下剋上とナンバリングシリーズの停滞
レビュー動画だとコロコロ買い替えて「いいじゃん」「買ってよかった」の自己正当化ばかりで、サイエンスのかけらもないのでいつもの比較表。(アップルの省電力・高性能チップ開発能力は際立ってるな。。)
- SE3 の下剋上感すごい。費用対ベンチマークだとこれのみ。(A14 くらいかと思わせて A15 を載せてきた・・)
- Phone 14 でスペックの停滞が起きてる
- SE2 からの乗り換えだと、pixel 系は no way 。iPhone 14 が停滞してるので SE3 がすごい費用対効果。とはいえ、iPhone 14 Pro (高い・・) らへんまでいかないと世代のジャンプアップが少ない。iPhone 15 まで待って A16 載せてくればありかねぇ。
- メモリの増量よりチップセットの世代が新しいほうがブラウザの体感速度にはダイレクトに効く (13 Proは 6G 、平13 は 4G など)
- iPhone 14 Pro は吊るしの M2 Air (8G mem) 相当のスペック。価格を正当化。
書評 大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争
経済と軍事力による主に近大ヨーロッパの勢力の移ろいを分析した歴史的な本。
3行サマリ
- 国家の勢い = f(労働人口の厚さ, 教育水準, 資本力・稼ぐ力) で概ね関数化可能。国家の勢いと軍事力には若干のズレがあるが、Δ国家の勢いが低下している状態で軍事力を維持・強化しようとしても衰退する。企業に援用すれば本業の稼ぐ力(営業CF)や機動的資本調達能力と従業員の技術力や特殊なスキルの関数になってくる。ただベースのなるのは稼ぐ力であることが肝要だ。また地政学的リスクに巻き込まれずに国力を維持することが振り返って重要であり、企業においてはレッドオーシャンでの苛烈な競争に勤しんでいると課外のジャンルから出し抜かれてしまう。
- 20世紀初めの日本の工業力はイギリス100とすると1桁代。イギリスがメインストリームでアメリカはWW1後にかけてキャッチアップ中といった感じだ。ところでJRの前身の国鉄のさらに前身の日本鉄道は名目上民営であったが、日本鉄道の導入車両をみるとほとんどイギリス製となっており当時のイギリスの工業力を如実に反映している。同時に当時数十年前までは帯刀して侍していた先達らが世界の趨勢に急速に各国の技術を導入しキャッチアップしてインフラを整備していたことには恐れ入る。
- アメリカの近代史ではマニフェストディスティニーが重要な観点となるが、これがWW1で太平洋・大西洋を横断する観点とイギリスが広大な植民地を抱えながらその維持のために軍事力を消費し、その植民地がさほど儲からないと運営自体に手間かけたく無い気持ちもあることを考慮すると第三世界..? からみたアメリカ・イギリスの挙動に対する心象も理解しやすくなる。